校長あいさつ

 このたびは、大阪教育大学附属特別支援学校のウェブサイトを訪問していただきまして、ありがとうございます。
 2022年4月に大阪教育大学附属特別支援学校の第18代校長に着任いたしました西山 健(にしやま たけし)と申します。これまでは、大学における研究活動ならびに学部・特別専攻科・大学院の教育活動等に携わってまいりましたが、現在は附属特別支援学校の校長を兼任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 昨年度は、本校の教育目標に「相互依存」という一語を、教育方針に「存在」という一語をそれぞれ加え、教育・支援活動を行ってまいりました。

【教育目標】
 ・自立と相互依存、社会参加に向けて一人ひとりの可能性を最大限に引き出す。
 ・キャリア教育の視点に立って卒業後の社会で生きる力を身につける。

 障がいのある子どもの教育目標としてよく掲げられることに「自立」があります。確かに障がいのある子ども、障がいのある人にとって「自立」は非常に大きな目標であり課題であると言えます。しかし「自立」とは言っても、めざすのは「完全なる自立」ではなく、「そこそこの自立」でよいのではないでしょうか。そして、最終的な目標は「そこそこの自立」という通過点の先にある「相互依存」ではないかと考えます。「相互依存」とは、相互の信頼に基づき、当てにし合える関係性です。困ったときに「助けて」と言えるのはひとつの能力ですし、リーチアウトできる相手やネットワークの存在は生きていく上での力となります。そして、自分も誰かから当てにされる存在になること、自分に向かって助けを求める人がいたらその手をつかめるようになることが大切です。ちなみに、日頃子どもたちには「相互依存関係」を「お互いさまの関係」という言葉で伝えています。

【教育方針】
 ・一人ひとりの存在と能力を尊重し、集団的あるいは個別的指導を通じて発達の可能性をより豊かに実現させる。

 昨今、”evidence-based”(科学的根拠に基づく)教育という言葉を耳目にする機会が増えました。これが重要であるのは言うまでもありませんが、私がより強調したいのは”existence-based”(一人ひとりの存在を基点とした)教育です。
 私はこれまで人間性心理学の立場から知的障がい・発達障がいのある子ども、とりわけ様々な行動上の問題を抱える子どもたちとかかわってきました。そのなかで意識するようになったことのひとつが、子どもの「行動」だけではなく「存在」に目を向けた支援の必要性です。学校や家庭で表面化しているのは確かに特定の行動なのかもしれません。しかし、その背景にはより大きく本質的な課題があるように思います。多くの場合、それは人間関係の不調であり、その根底にあるのは実存的な課題です。子どもの行動に着目するのを一旦やめて、子どもの存在に価値付与し、人間関係の再構築を主眼とするアプローチを行った結果、行動上の問題が軽減したという事例をこれまで数多く経験してきました。
 私たちは、その人が何をしたか(行動)だけでなく、その人の在り方(存在)にもっと目を向ける必要があります。同時に私たちに求められるのは、手助けを「する」(doing)こと以前に、手助けに「なる」(being)ことだと思います。教師は子どもが知識や支援などを求めて手を伸ばしたときに、そこにいて応える存在でなければなりません。そもそも教師が手助けになる存在として意識されていなければ、子どもは手を伸ばさないかもしれません。何をどのように教え、また支援するかはそれからの問題と言えます。

 併せて、教育・支援活動方針の見直しを行いました。概要は以下のとおりです。

【資質・能力の育成について】
 本学附属特別支援学校は,特別支援学校学習指導要領に示されている学修者の資質・能力の開発を,未来の教育も見据えて高い水準で実現し,新しい社会の創造に寄与するため,自立し相互依存できる人間を育てます。
 附属特別支援学校においては,生涯発達の視点に立脚し個々の子どもの発達段階を踏まえながら,安心・安全な環境のもと,evidence-based(科学的根拠に基づき),existence-based(個々の存在を重視し),interdependence-oriented(相互依存関係の構築をめざす)教育・支援に取り組みます。

【教育課程編成・実施の在り方について】
 附属特別支援学校では,学習指導要領を基本に,学習および社会生活の基礎となる資質・能力の育成と,多様性の観点から未来社会の可能性を拓くためのカリキュラムを編成します。また,次の学習指導要領改訂を見据えたカリキュラム開発を行っています。
 小学部では,健康で楽しく学校生活を送るなかで,自分の身のまわりに対する意識を高め,基本的生活習慣および学習の基礎となる力を養います。中学部では,主体的に生き生きとした学校生活を送るなかで,基礎的・基本的な知識と技能を高め,望ましい生活習慣と社会性を養います。高等部では,自主的・主体的に学校生活を送るなかで,生活習慣の安定を図り,質の高い職業・家庭生活に必要な知識と技能を高め,自分らしく他者とつながる力を養います。そして,小学部・中学部・高等部を通して,キャリア教育を軸とする一貫性・継続性のあるカリキュラム構築と実践により,インクルーシブな社会(共生社会)を実現し生き抜く力を養います。 

【求める入学者像について】
 附属特別支援学校では,一人ひとりが自立した個人として他者と相互依存関係を構築し,能動的で多様な社会参加をめざす児童生徒の育成を重視した教育支援活動を行っています。そのため,入学に際しては,児童生徒の個性,能力,発達等を多面的・多角的に評価することを意図した選考を実施します。
 なお,保護者の方には,大学と連携した教育研究に取り組むとともに,教育実習等を通じて教員の養成や研鑽にも貢献するという附属学校園の社会的役割へのご理解と賛同をいただきます。

 以上の点を教育目標および教育・支援方針として掲げ、本校の目指す子ども像である「明るく健康で意欲的な子ども」「仲間とともに活動に参加できる子ども」「自分で考え行動できると同時に、社会の一員としての自覚を持つ子ども」の実現に向けて、保護者の皆様方、地域の皆様方、ならびに関係者各位のお力添えをいただきながら、教職員一同、教育・支援活動および研究活動に邁進してまいります。皆様からのご支援・ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

令和6年4月
大阪教育大学附属特別支援学校
第18代 校長 西山 健


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