本校では、WWLの学校設定科目で『データサイエンス』の授業を開講しております。
データサイエンス教育として、1年生全員が『データサイエンス基礎』を受講し、2年生の希望者が全部で6回の『データサイエンス』の授業を受講します。
2023年度のデータサイエンスの前半3回の授業として、安松健先生(大阪教育大学・特任准教授)に実施して頂いた内容をご紹介いたします。
なお、第1回目については、安松先生が開発された授業カリキュラムを、本校教諭である増田先生が、実践授業として実際に授業を担当しました。この授業は、大学にて開発した授業プログラムを、附属校の教員にて活用・展開したものになります。
本校の『データサイエンス』について
1年次に履修した「データサイエンス基礎」の内容をさらに発展させ、データを科学的に活用する方法を学び、既存の教科・科目では学ぶことのできないスキルやこれからの社会で必要とされるモノの見方・考え方を身につけることを目的とした授業です。
◆講義1回目【9月30日(土)】
「データリテラシー」
【授業概要】
データサイエンスや AI 技術を使う上での基礎リテラシーを確認していきます。
近年、社会人向けの教養書として、グラフやデータの誤解・錯覚・トリックについての書籍が、世界的なベストセラーとなっており、書店では平積みとなっています。また、この種の問題は、PISA(国際学力調査の1つ)でも以前より出題されています。
また、安松先生は、データ活用・AIコンサルタントでもあるため、社会における様々な実践現場での経験と上記の書籍やPISA出題問題も含めて、本授業プログラムは開発されました。
数学の問題として出題されると解ける問題でも、日常生活や社会問題解決現場で提示されると、トリックを見破れず騙されてしまう現場を数多く経験してきた先生が、作成・編集した問題・演習を通じて、データのトリックに騙されないために、
また、データや技術に踊らされ非科学的な結論を導かないために、必要不可欠な知識・スキルについて増田先生より授業実施・解説がされました。
例えば、「縦軸の操作や3Dグラフによって可視化したグラフも見にくくなったり、正しく情報が伝わらなかったりする」こと等を具体例と共に学びました。
- ポイント①:縦軸を確認する
- ポイント②:横軸を確認する
- ポイント③:平均だけでなくバラつきを確認する
- ポイント④:因果関係と相関関係は違う(因果の逆転、疑似相関に注意)
以上のようなポイントも教えて頂きました。
「成功の法則を見つけよ!~予測・推論、アルゴリズム~」
【授業概要】
機械学習や AI を理解するためにアルゴリズムとは何かを理解し、プログラミング的思考を学ぶ演習を行います。プログラミング言語の知識は一切不要です。
この授業プログラムは、情報科の学習指導要領に則り、プログラムの記述方法や各プログラム言語の固有知識の習得が目的にならずに、プログラミング的思考を習得する普通科の情報科授業として、文科省事業の一部として開発されたものになります。
【アルゴリズムの問題をみんなで解いてみる】
予測・推論、アルゴリズムについて、具体例やゲームなどの体験的な活動を通して学びました。
【ルール】
- 1マスには1人だけ入ることができる
- 前にだけ進める(後ろには戻れない)
- 人は誰でも1人だけ飛び越えられる(2人は飛び越えられない)
- 実際にみんなで動いて考える
このようなゲームを実際に体験しながら、アルゴリズムの本質について皆で協働して考えました。
◆講義2回目【10月14日(土)】
「身の回りにある人工知能(AI)を理解する」
【授業概要】Siri/Googleアシスタント(OK Google)と、ヒトの言葉の学習はどのように異なるのか。ChatGPTを上手く活用するために必要な知識・スキルとは何か。また、Spotify などの音楽配信サービスの裏側にある AI はどのようになっているのか。AI の利点と限界を理解するためにも、普段知らず知らずのうちに使っている身の回りにあるサービスの裏側にある AI について考えていきます。
SiriやGoogleアシスタント、ChatGPTについて、また、YouTubeMusicやSpotifyなどの身の周りに存在するAIを利用したツールを実際に動かして、それらの挙動から、どういったアルゴリズム・仕組みなのか推測してみました。
「ビッグデータ時代⁉ほとんどはデータになっていない」
【授業概要】データサイエンスや AI 技術を活用する上で、データ収集の重要性について確認した上で、データ収集方法の 1 つ、機械学習のためのアンケート設計の演習を行います。
機械学習のためのアンケートの制作方法を学習するために、修学旅行での思い出を文章としてエピソード形式で記述し、それらから要素を抽出してアンケートを制作しました。
◆講義3回目【10月21日(土)】
「ノーコード・ノンプログラミングで統計解析」
【授業概要】統計解析ソフト JASP はノンプログラミング(プログラミング言語は不要)、GUI(マウスとクリック)で操作可能なフリーの解析ソフトです。この JASP を利用して、因子分析を実際に体験する演習を行います。
修学旅行のアンケート結果をHAD(統計分析ソフト)やJASPを用いて、因子分析をしました。
次に、因子分析結果を踏まえて、ベイジアンネットワークによる修学旅行モデルの構築と、どのような人が、どのような修学旅行体験をしたかの分析を体験しました。
(ベイジアンネットワーク構築・推論はNTTデータ数理システムのBayolinkSを使用)
試行錯誤を繰り返し、より精度が高い分析方法を探しました。
また、これらの取り組みでは、ChatGPTを『議論の仲間』として採用し、AIと共に考えることを行いました。
◆受講者(生徒)の感想
- 私はパソコンの使い方やデータの分析をあまりやったことがなくうまくできるか不安だったけれど、修学旅行の思い出を振り返りながらアンケート項目を考えたり様々な分析方法に挑戦することで楽しんで取り組むことができました。講義を通して学んだデータの収集・分析や人工知能については他分野でも活かすことができるものであり、この学びを大切にしたいと感じました。
- 正直何となくの気持ちで受講すると決めたデータサイエンスでしたが、受講して本当に良かったと思えました。専門用語ばかりを使った固くて分かりにくい話ではなく知識がほとんどない自分たちにとって分かりやすい内容に噛み砕き、また具体例をたくさん挟むことで全く飽きずに話を聞いていたのでよく理解することができました。
- データサイエンスで学べることは、コンピューターを用いたデータの分析方法とそこからデータの元となるものの改善点を考えていく力を身につけることだと思っていた。しかし、データサイエンスで行うデータの分析は数字データだけでなく、文章データを用いたりコンピューター上でするとしてもソフトで決められた動作だけを覚えていけばできるようになるのではなく、データごとに異なる特性を理解した上で、適切な指示を出していく必要がありその指示が出せないと求めている結果が出せないことがわかった。
- 他の人と一緒に作業をすると自分の知らなかったメゾットを使っていたり、また実際にシミュレーションを通してのデバッグもスムーズだった。そこにはプログラム言語への理解というより、論理的思考やアルゴリズムを考える経験の差があった。それに気づき、プログラムの本質は記述するすることではなく、アルゴリズムを考え出すことだという考えを学んだ。また、自分の高めるべき技能もはっきりした。
- アンケートの取り方についても今までにやったことのないような選択肢で、はじめは目的等がわかりませんでしたが、因子分析のための選択肢であるとわかり、合点がいきました。また、因子分析についてもなんとなく知っている程度で、実際にやったことはなく、今回因子分析のやり方を知り、無料のソフトで簡単にできるとわかり、今後に生かしていきたいと感じました。
(データサイエンスの授業前半は、ここまでです。後半の3回の講義に続きます。)