2022年度実施グローバル探究Ⅱの実践内容のページです。
授業概要と授業内容を紹介致します。
授業概要(グローバル探究Ⅱ)
学校設定科目の「グローバル探究Ⅱ」の授業概要をお伝えいたします。
- 対象:1年生全員157名(本校66期生)
- 日時:毎週火曜日2コマ(50分間×2)
- 指導者:教員 8名
- 年間計画表[シラバス(PDF)]
指導目標
身近なところから世界で起きている諸問題に向かい、地域や世界の文化の違いや人としての在り方について批判的に考えることで、課題を発見し、平和の文化を築くために、以下の資質・能力を育成する。
- グローバル探究Ⅰの学習をベースにして、多教科連携の横断的な学習や外部講師による講演から、よりよく課題を発見し、解決していくための知識・技能を身に付ける。
- ユネスコ国際教育の理念に基づき、人間の尊厳・平等を尊重し、ESDにまつわるテーマについて探究して持続可能な社会を実現するための態度を育てる。
- 世界の諸問題に主体的に取り組み、その理解と解決に向けて仮説を立てたり、調査して得た情報を基に分析したりする力を身に付けるとともに、論理的にまとめ・表現する力を身に付ける。
評価の観点
- グローバル探究Ⅰで学習したことを活かし、よりよく課題を発見し、解決していくための知識・技能を身に付けることができた。
- ユネスコ国際教育や、ESDの理念を理解し、人間の尊厳や平等を尊重し、持続可能な社会の実現に向けて考えることができる。
- 世界の諸問題に主体的に取り組み、探究的なプロセスを通じて、他者に自分の考えを伝えることができる。
授業内容
【第0回】「学びみらいPASS PROG-Hテスト(河合塾)」実施(4/12 Tue.)
「学びみらいPASS」とは、社会で求められる「新しい学力」(「教科学力」「リテラシー」「コンピテンシー」に加え、学力育成の下支えとなる「興味・関心」「学習生活パターン」までを含め「新しい学力」と定義)を測定し、生徒の特長・特性を多面的に捉えた進路・進学指導を実現するアセスメントテストです。
そのうち、社会で求められる「汎用的な能力(ジェネリックスキル)」を測定する「PROG-Hテスト」を、本稿では一昨年度より受験しており、66期2年生は今回が2回目の受験となります。
このテストは、現実的な場面を想定して作成されており、知識の有無を問うものや、自己診断的なものが多かった従来のテストとは異なり、「知識を活用して問題を解決する力(リテラシー)」と「人と自分にベストな関係をもたらそうとする力(コンピテンシー)」を測定するものです。このテストの結果を今後の学校生活にどのように活かすかについて、生徒対象の説明会を後日開催予定です。
【第1回】全体オリエンテーション・情報の集め方~実践編~(4/19 Tue.)
担当教員紹介、本年度のグローバル探究Ⅱの進め方について確認した後、生徒それぞれの興味・関心・問題意識について整理しました。それをペアやグループで共有していくなかで、どのように授業における探究活動へと昇華していくのかについて考えました。
教室では、昨年度の探究Ⅰの授業で学んだ情報の収集方法を、各自が設定した探究テーマに沿って活用してみました。CINIIやGoogle Scholarなどで論文を検索したり、電子ジャーナル等を活用して実際の論文をインターネット上で読んだり、それらを参考文献リストに加えていく作業をしました。これらの練習が今後の探究活動に結びつくはずです。
【第2回】「知ることを知る」・あらまし読み(4/26 Tue.)
「知の理論」(TOK, Theory Of Knowledge)の理論を使って、ものごとを批判的にみて思考する講義を聴き、いくつか実践も行いました。「知の理論(TOK)」とは、国際バカロレア(IB)でも取り扱われている「考え方」を問う哲学のような科目であり、わたしたちが持っている知識を、「知る」また「知っている」とはどういうことなのかなどについて学習することで、批判的思考を培うことを目的としています。本来であれば3時間は必要な授業を、1時間に凝縮して行ったので、慌ただしかったかもしれませんが、熱心に聞き入っていました。
研究・探究活動において、先行研究は欠かせませんし、インプットが少ないとなかなかアウトプットもできません。研究のための「材料集め」として、いわゆる「通読」をしない読書の読み方について学び、実践してみました。昨年度の「アカデミック・リーディング」とも似ていますが、探究Ⅰを経た現時点で、さらに実践的に「知識・情報を獲得するための読書」の方法を体感したことでしょう。
【第3回】フィールドワーク・講演「ウクライナを知る」(オンライン)(5/10 Tue.)
「そもそもフィールドワークって?」「グループごとにフィールドワークを行うことのメリットは?」など、フィールドワークについての概要を教員から簡潔に説明した後、各グループごとに興味・関心の整理、フィールドワークのテーマ・調査対象の設定・調査対象に対する事前調査を行いました。興味・関心が近い生徒同士であっても、フィールドワークにおいて調査したい細目は少しづつ異なります。1つのグループとして、最終的な調査項目の調整に時間をかけて、お互いに意見を出し合いながら取り組んでいました。
京都教育大学の上田安希子先生によるウクライナの現状についての講演会を実施しました。上田先生のもとで(コロナ禍のため日本に入国できないためオンラインで)日本語を学ぶウクライナ在住のおふたりの留学生にも現地から参加してもらい、生徒からの質問にも、詳細に回答してもらうことができました。ウクライナに関するクイズでも大変盛り上がりました。
この度のロシアにウクライナ侵攻はけっして今に始まったことではなく、戦争状態は2014年からずっと続いていることという現実や、ウクライナ情勢には複雑で長い歴史があること、ウクライナ国内でも地域や世代によって価値観や考え方がまるで異なることなど、まさにウクライナの「今」を知ることができました。ウクライナに住む若者の「生の声」を聴く貴重な機会となったようです。
【第4・5回】フィールドワーク準備②・③
次回から実践するフィールドワークの準備を行いました。
【第6回】フィールドワーク本番(6/7 Tue.)
各グループで綿密な計画を立て、訪問先にアポイントメントをとり、ようやくフィールドワークが実現しました。現地で取材・見学したグループ、オンラインで取材をしたグループなど多岐にわたります。
主な調査先は、
- 東映太秦映画村、
- MARUZEN&ジュンク堂梅田店、
- 紀伊國屋書店梅田本店、
- 国立民族学博物館、
- 大阪府立中之島図書館、
- アストロスケール、
- ギャラリー+カフェミュゲ、
- つぐの庭、
- 茜建築設計事務所、
- フェアトレードショップTeebom、
- 株式会社天地人、
- 株式会社平泉洋行、
- 株式会社KUBOTA、
- 大阪大学総合学術博物館、
- 株式会社BugMo、
- 神戸女子大学健康福祉学部健康スポーツ栄養学科、
- 池田鉢塚店業務スーパー、
- 走井給食センター、
- 池田福祉総合センター、
- 川西イトマンスイミングスクール、
- 市立池田病院、
- 時光舎、
- 神宮茶処あじゃり、
- 市立箕面病院、
- 大阪成蹊短期大学幼児教育学科、
- 株式会社TCE、
- 大阪地方裁判所、
- 手塚治虫ミュージアム、
- 兵庫県立美術館
などです。
【第7回】フィールドワーク報告会準備(6/14 Tue.)
次回の探究の授業では、フィールドワークでの調査結果をプレゼンテーションします。今回は、調査結果をGoogleスライドにまとめる作業をしました。
【第8回】フィールドワーク報告会(6/21 Tue.)
各班10分間のプレゼンテーションを実施しました。質疑応答も活発に行われました。最後にふりかえりシートにまとめます。
【第9回】JICA講演会(7/12Tue.)
JICAから8名の講師の方に来ていただき、協力隊として途上国に派遣された際の経験を伺いました。
休み時間にまで講師の先生方へ質問をしている生徒もおり、実際に途上国の現状を体験した方のリアルなお話に興味津々のようでした。
【第10回】個人探究1(7月19日(火))
いよいよ、2年間の最終目標となる個人探究が始まります。この日からは、興味のある分野の似通ったメンバーで教室に分かれ、探究活動を行います。
年度の最後には、個人探究の成果をレポートの形式でまとめます。最終的なレポートの形式や、今後の日程の確認を行いました。11月上旬に中間報告会が予定されています。
第1回目の今回は、探究活動には先行研究調査が必要であることを学びました。フィールドワークやJICA講演会での学びを振り返ったあと、研究テーマの仮設定を行い、グループで共有しました。「夢ナビ」をヒントにしたり、「Googlescholar」を用いて学術文献の検索をしたりしながら、先行研究調査を始めました。
夏休みの課題として、興味のある分野の論文や書籍を読み、レポートを書く課題が出されました。
第10回 個人探究2〔8月24日(水)〕
個人探究2回目では、夏休みに行った先行研究調査を踏まえ、リサーチクエスチョンの作成を行いました。
Googleスプレッドシートで配布された「リサーチクエスチョン作成シート」を用いて、リサーチクエスチョンを作りました。
作成したリサーチクエスチョンが充実したものかどうか、『課題研究メソッド』(啓林館)のチェックリストを用いて確認します。
第11回 個人探究3/学びみらいPASS解説会〔8月30日(火)〕
個人探究3回目では、研究計画書を作成しました。授業予定を確認しながら、自身の研究計画をたてます。
「学びみらいPASS」解説会では、4月に行った探究する力をはかる「学びみらいPASSの結果返却とともに、河合塾の方に来ていただき、結果の分析・解説を聞きました。
第12回 アカデミック・ライティング講座①/クロスカリキュラァ概論〔9月6日(火)〕
アカデミック・ライティング講座
大阪大学全学教育推進機構から坂尻彰宏先生・堀一成先生を講師にお招きし、前年度に引き続き、アカデミック・ライティング講座を開催しました。
前年度はそのうち、リーディングに特化した「アカデミック・リーディング講座」でしたが、今年度はレポート作成を視野に、2回にわたる「アカデミック・ライティング講座」です。
今回は、第1回目として、パラグラフ・ライティングについて学びました。現在各自が進めている個人探究のテーマに即して、問いと答え、トピックセンテンスを書いてみるワークも行いました。
クロス・カリキュラァ概論
「2050年の人口100億人社会を考える」
グローバル探究Ⅱの授業を中心に、一般の教科授業と連携したトピック型クロス・カリキュラァを実施します。
持続可能な社会の実現に向けて課題を発見し、創造的な解決に立ち向かう資質の獲得を目指し、トピックである「2050年の人口100億人社会」で、将来起こりうる問題、課題を考えることにより、今現在の取り組むべき課題の発見に具体性を持たせることを目的としたものです。今回の授業では、その概論にあたる講義を受けました。
第13回 アカデミックライティング講座②/個人探究4〔9月20日(火)〕
アカデミック・ライティング講座の2回目と、個人探究4回目を実施しました。
アカデミック・ライティング講座では、学術論文(レポート)の悪い例を見ながら、悪い点をグループで書き出していく学習を行いました。
個人探究4回目は、3回目で書き始めた研究計画書を完成させます。「課題研究メソッド」のチェックリストを用いて、自分の計画が充実したものであるか、確認しました。
第14回 個人探究5〔10月4日(火)〕
ここからの個人探究は、各自が立てた計画書にそって進めていきます。その日の成果は「研究ノート」(Googleドキュメントで作成)に記し、担当教員に提出します。
第15回 個人探究6/クロス・カリキュラァまとめ〔10月11日(火)〕
クロス・カリキュラァ概論を受けたのちに、各科目において「2050年の人口100億人社会を考える」 をテーマにした授業を受けた生徒たちは、授業を受けて自分たちが考えたこと、感じたことを短歌やマンガ、絵によって表しました。
第16~19回 個人探究8~10〔10月18日(火)、11月1日(火)、11月15日(火)、11月22日(火)〕
各自が立てた計画書にそって探究活動を行いました。次回は中間報告会です。中間報告会はポスター発表形式で行います。
第19回の授業では、ポスターの作成を行いました。
第20回 中間報告会〔11月29日(火)〕
中間報告会を行いました。これまで探究活動をしていた教室のメンバー内での発表です。一人4分間発表し、質疑応答を行いました。これまでに探究してきた内容を報告し合い、多くの教室で、活発な質疑が行われました。4分間という持ち時間を、短く感じた生徒も多かったようです。生徒間で相互評価も行いました。
第21~24回 個人探究11~14〔12月20日(火)、1月10日(火)、1月17日(火)、1月24日(火)〕
中間報告会でもらった質問や意見を踏まえて、最終レポートの執筆に本格的にとりかかります。
最終発表やレポート提出に向けてのスケジュールを再確認したのちに、自分の探究において足りていない材料は何かを整理し、文献を読み直したり、アンケートを行ったりしました。
1月21日(土)、22日(日)には「高校生国際会議」が、天王寺キャンパスにて行われました。高校生国際会議では、グローバル探究Ⅱの成果を、ポスターセッションや分科会での口頭発表という形で、校外に向けて発信した生徒もいました。
最終レポートはひながたをGoogleクラスルームを通じて配布しており、生徒たちは手順に従って書いていくことができるようになっています。
冬休みには、「序論」「基礎」「研究方法」を書いてくることが課題で出されました。担当教員からコメントをもらいながら、探究を深めていきます。
第25回 個人探究15〔1月31日(火)〕
1月30日が最終レポートの提出〆切でした。このレポートをもとに、最終発表のスライドを作成します。規定に従いながら、見る者にとってわかりやすいスライド作成を心がけます。
第26・27回 研究発表会〔2月7日(火)、2月21日(火)〕
集大成となる最終発表です。一人当たりの持ち時間は、発表7分間と質疑応答2分間の計9分間です。
スライドを用いて、1年間の研究成果について発表を行いました。
質疑応答では、鋭い質問もあり、探究する力、批判的思考力の成長を感じるものとなりました。
本年度の探究活動は以上です。