2024年度実施の「グローバル探究Ⅲ」の授業の概要と、各回の授業の様子、生徒の活動の様子をお伝えします。
授業の概要
「グローバル探究Ⅲ」は3年生対象の選択科目です。本年は履修者4名で教員4名が授業で指導・助言をいたしました。
※年間計画表は シラバス「グローバル探究Ⅲ」(67期) です。
指導目標
グローバル探究Ⅰ・Ⅱで取り組んだ内容を更に発展させ、自己の在り方や生き方と関連づけながら探究活動を深める。
研究成果を校内で発表し、積極的に校外でも発表する。また、成果は論文にまとめる。探究活動に取り組んだ過程は必要に応じてポートフォリオにし、卒業後の進路実現に活用する。
履修生は7月に中間発表、9月に最終発表を行い、10月末までに論文を提出する。
また、校外の発表は必須で はないが、研究発表会で積極的に発信することを目指す。成績評価は、活動状況・発表・論文を基に文章表記にて評価する。
授業の実践内容
①オリエンテーション
オリエンテーション(4月10日)
初回の授業では、4名全員と担当教員が揃い、グローバル探究Ⅲのオリエンテーションを行いました。全体の会合が終わったのち、各自指導教員と今後の活動予定を立てました。
本年度の受講者は、本校67期生の田中結子さん、中堀壮真くん、船岡誠志郎くん、吉田梨桜さんの4名です。
探究活動の方針の発表(4月10日)
オリエンテーションでは、生徒それぞれが現在想定している「探究テーマ」について発表しました。
なんとなくテーマは決まっているけれども、明確な課題やステップをまだイメージできていない状態でした。
②研究計画発表会に向けて
研究計画の整理(4月)
自分の探究課題のテーマについて、先行研究の調査を念頭にして、半期の活動計画を立てることに重点を起き、活動を行いました。
週に1回ほど、担当教員と打ち合わせを行い、探究の内容を深めながら、研究を進めました。
研究計画発表会(5月1日)
研究計画発表会では、約1ヶ月間で調査した研究を踏まえ、自分の探究のリサーチクエスチョンと仮説、この半期の活動計画を説明しました。
他の受講生は、発表者の計画を聞いて、「検証可能な探究のテーマ・仮説が設定されているか」、「探究方法は、仮説を明らかにするのに相応しいか」、「探究にオリジナリティがあるか」、「探究の意義が明確に示され、自分の将来に繋がるものであるか」、「聞き手に伝わる工夫した発表になっているか」の5つの観点で評価し、意見交換を行いました。
③中間発表会に向けて
研究推進(5月・6月)
研究計画発表会で、定めた探究計画をもとに、GW・中間試験・附高祭など、忙しいスケジュールの合間に探究活動を進めていきました。
みんな、自分が本当に解決したい課題に取り組んでいたので、毎回の担当教員との授業で真剣な意見交換ができました。
オリジナルのアイデアを生み出して合理性を検討したり、先行研究と自分の探究課題を整理したりしている時期でした。
また、生徒によっては、1年生や2年生の探究活動の時間を利用させてもらい、下級生全員に対してアンケート調査を行い、回答数300件弱のデータを使い、分析することを行うこともしました。
中間発表会(7月16日)
それぞれ個人の探究活動を整理し、多様な意見を募るため、中間発表会を実施しました。
中間発表会では、大阪教育大学の仲矢先生、SSHコーディネーターの筒井先生、実業家の徳沢さんをお招きし、また本校の教員の参加も交えて、たくさんの質疑応答がなされました。
中間発表会では、部分的に結果が得られたり、また残りの活動の見通しを含めた探究活動の内容をポスター発表の形で行いました。
発表タイトルをご紹介します。
・田中結子:「Hz を用いた睡眠の良質化に効果的な音楽の追求 〜加速度センサーを利用した睡眠状況の測定〜」
・中堀壮真:「SNS翻訳による日蘭交流とファンベースの拡大及び日本市場開拓へのアプローチ」
・船岡誠志郎:「持続的な子ども食堂の経営モデルとは?」
・吉田梨桜:「いじめの放置を防止するための第三者の介入 ―持続可能なビジネスで風通しの良い学校づくり―」
おのおのの生徒は、聴講者からの鋭い質問にも的確に答えることができていました。先行研究を丁寧に調査して研究を行ってきた成果です。その一方で、聴講者からの的確なアドバイスには素直に耳を傾けて参考にしていました。
発表後も、個別に意見交換が熱心になされました。
中間発表会の内容を参考にして、自分の探究活動をさらに進めます。
④中間発表会〜後輩への動画発表
研究推進(7月8月)
3年生として大学受験の勉強が本格化し、夏期休暇に入る時期です。
中間発表会で決めた方針に従い、この時期も合間を縫って、自分の探究活動に邁進し続けました。
実際にインタビューの調査や実験、交渉など行動を伴ったアクションを行うことで、仮説を提唱するだけではなく、仮説の正当性を実証するための活動を重ねました。
また、4名とも学外での研究発表会やビジネスコンテストなどで積極的に探究活動の成果や内容を発表しました。
2年生向け講演会【動画発表】(9月10日)
本校では、先輩が探究活動をする姿を伝える目的で、下級生に向けて探究内容を発表する機会を設けています。本年は、時間割の関係上、3年生が研究内容に関する動画を撮影し、2年生のグローバル探究の時間内に放映するという機会を設けました。
2年生の授業の様子については、先輩の発表の姿を真剣に聴いているという印象でした。また、この発表について2年生に聞いてみると、「すごかった」と感想を述べていました。
今年は、7分間程の探究内容の説明動画と、90秒ほどの探究活動に関するインタビュー動画を放映しました。
⑤最終成果発表会に向けて
研究推進・論文執筆(9月・10月)
主に夏期中に行った実験や調査の結果をまとめる作業が本格化した時期でした。
最終論文の執筆を進めつつ、また、自分の探究の成果の合理性が他者に明確に伝わるようにするため、検証の結果と粘り強く向き合った時期になっていたと思います。
なお、中間発表での意見や、夏期中の探究の内容を踏まえ、探究内容を大きく変えた生徒もいます。しかし、全くのゼロからの出発ではなく、これまでに学んだ探究テーマの見方や考え方、探究の方法を活用し、新しい探究テーマにスピーディーに取り組みました。
成果発表会(10月4日)
成果発表会では、本校の教員と、実業家の徳沢さんの参加のもと、この半期の探究(活動)の成果をスライド形式で講演しました。
各生徒の講演タイトルは次の通りです。
・吉田梨桜:高校生が将来の職業を見据えた学部学科選択をするためのメタバース内での職業体験
・船岡誠志郎:持続的な子ども食堂の運営モデルとは?
・中堀壮真:SNSによる日蘭交流&ファンベースの拡大及び日本市場へのアプローチ-蹴球を通じて
・田中結子:純音を用いた睡眠の良質化に効果的な音楽の追究〜加速度センサーを利用した睡眠状態の測定〜
全員が自分の探究課題と成果を、自分の課題として捉え、グローバルな視点からPDCAサイクルを回しながら問題解決に取り組みました。
4名とも自分の研究内容に誇りを持ち、高校を卒業してからの自分の活動にも繋がる成果を発表してくれました。
⑥今後の活動へ
最終論文執筆(10月)
いままでに得た研究内容と、成果について、論文の形でまとめることが最後の課題です。
これまでの膨大な資料を適切に引用しながら、論文を執筆する必要があるので、多くの時間が必要な作業です。
今後の活動へ
グローバル探究Ⅲでは、探究活動を深めるだけではなく、「自己の在り方や生き方と関連づけながら探究活動を深める」ことも目標です。
特に、後半の活動以降では、今回の探究内容を自身の今後の進路などに生かすための言動がたくさんありました。
この半年の活動の経験をもとに、今後も自分の興味関心があることに深く探究をしてほしいです。
受講生徒の感想
最後に、受講した4名にグローバル探究Ⅲで楽しかったことを聞きました。
「同じように探究にやる気のある同級生に刺激をもらいながら、活動を進められることが楽しかったです。」
「探究Ⅰ・Ⅱで行った経験を踏まえて、自分が興味を持ったものに対して、自分なりの方法で結論を導き出せることができ、楽しかったです。」
「中間発表会や外部の講演会で大学の先生などの前で発表したときに、さまざまな知見を得ることができたことが楽しかったです。」
「グローバル探究Ⅲは、これまでの授業と違って、先生方に個別に充実したアドバイスをもらうことができるので、皆さん(2年生・1年生)も是非頑張ってみてください。」
本年度のグローバル探究Ⅲの活動実践報告は以上です。