2024年度実施グローバル探究Ⅱの授業実践をご紹介いたします。
グローバル探究Ⅱの授業の概要と、各回の授業の様子、生徒の活動の様子をお伝えします。
(最新更新日:2024.12.11)
授業の概要
学校設定科目の「グローバル探究Ⅱ」の授業概要をお伝えいたします。
- 対象:2年生全員145名(本校68期生)
- 日時:毎週火曜日2コマ(100分間)
- 指導者:教員 8名
※年間計画表は シラバス「グローバル探究Ⅱ(2年)」(68期) です。
指導目標
地域から世界に至るまでの多様な課題に対して批判的思考を行い、文化の差異や人間としての存在意義を理解し、問題解決に向けて取り組むことで、平和な社会の構築に資する資質と能力を養う。
- グローバル探究Ⅰの知見に基づき、多様な学科を連携させた学習や外部の専門家からの講義を通じて、問題の発見及び解決に必要な知識と技術を習得する。
- ユネスコの国際教育理念に則り、人の尊厳と平等を重んじながら、ESD 関連のテーマについての理解を深め、持続可能な社会構築に向けた姿勢を身に付ける。
- 現代社会が直面する課題に能動的に取り組み、仮説を立て、研究を進め、得られた情報を分析する能力を身に付ける。そして、その結果を論理的に組み立て、表現する力を養う。
評価の観点
知識・技能
よりよい社会を創造していく大切さを理解した上で、 そのために必要な取り組みを考案し、調査・実験等を適切かつ正確に実施できる。
思考力・判断力・表現力など
自己の関心をもとに、現代 社会の諸問題に関連する探究課題を設定し、それに応じた情報収集を行ったり適切な検証方法を考えたりして、探究できる。また、探究活動を通じて得たものを、今後の在り方に生かすことができている。
主体的に取り組む態度
様々な先行研究を踏まえながら、自らの探究内容の特徴を捉え、現代社会の諸問題に真摯に向き合うことができる。そして、よりよい社会の実現に貢献しようとしている。
授業の実践内容
【第1回】グローバル探究Ⅱオリエンテーション
「グローバル探究Ⅱ」の第1回目は、オリエンテーションでした。2年生では1年生での学びを活用、さらに発展させ、個人での探究活動を行います。
初回となる本日の授業では、グローバル探究Ⅱをご担当くださる先生方から、ご自身の研究やご自身が学部生または院生であった頃の探究(研究)について、お話いただきました。
生徒はみな、自身の進路目標や興味関心と関連させながら、真剣にリサーチクエスチョン について考えていました。今後の授業が楽しみです。
【第2回】情報収集ガイダンス
6限目は日経新聞電子版を用いて前回までにストックした「気になる記事」をもとに、「なぜそれに興味をもったのか」「見えてくるキーワードは何か」を考えて自分がどのようなことに興味・関心があるかを再認識しました。また、キーワードをもとに、グループで話しながら探究テーマとなる「問い」の形に発展させるプロセスを確認しました。
7限目は「情報収集」について担当教員よりいくつかのデータベースを紹介され、論文検索や蔵書検索の方法を学びました。6限目に確認したキーワードに基づいて実際に論文検索を行って「仮説を立てる⇒検証を行う⇒結果を整理して結論や新たな仮説を導く」という探究の過程を読み取り、今後の探究をイメージするとともに、自分の知らない学問分野やものの見方にも少し触れることができました。
【第3回】「知る」ことを知る
学習者が「知ること」について知るマインドを養い、知識にまつわる全てのことを問いによって深く掘り下げていく授業でした。
知識とは何か?、それが知識であることをどうやって認識するのか?、知るための方法は何で、知る人は誰なのか?、知識はどのように構築され、どのように編集されるのか?このような答えが1つとは限らない“開かれた問い”を探究することを通して、批判的思考を培い、学習者が自分なりのものの見方や他者との違いを認識できるように促す学びとなりました。
学習者が既に知っていることを振り返り、それをより大きな視座の中で捉えられるようになります。知識を鵜呑みにしてしまう危険性を考え、知識の本質的な部分について考えるプロセスを大切にする授業でした。
【第4回】考えるカラス
科学等の知識ではなく、科学や多様なモノの「見方・考え方」に焦点を当てた授業でした。ドライヤーと風船、吊るされた車輪などを活用して興味深く内容を考察する視点を大切にし、「見方・考え方」に重点を置いた授業であり、行われた実験には明確な答えを示さず、あえて生徒が考える機会を設け、自ら問い、考え、発言する良い契機となりました。
誰かによって用意された「科学の知識」ではなく、自ら課題を見つけ観察し、仮説を立てて実験し、その結果を基に考えるという観点は、これからの探究活動に必須の力となります。
【第5回】講演会「未来を創造する力~カービジネスにおける課題解決の考え方~」
5/14(火)6限7限のグローバル探究Ⅱでは、本校46期卒業生の酒井 裕氏を講師としてお迎えし、特別講演を実施しました。酒井氏は、ベンチャー企業等でご活躍された経験を活かし、今は弁護士の仕事をされながら、起業をめざしてご活躍されています。
ご講演では、私たちの社会が抱える諸課題に対して、自分たちがどのように貢献できるのか、ワークショップ等を通じて考えました。そして、世の中にある課題を正確に捉え、その課題解決に向けて熱意を持って取り組むことの大切さと難しさに気づかせていただきました。生徒たちにとっては、現実世界でのビジネスの重要性とその役割を理解するとともに、課題解決に向けて探究活動を行うことの意義を確認する良い契機となりました。
さらに、自律した個人として成長するためには何が必要なのか、コミュニケーション力を向上するためにはどうすればよいのかなどの問いと向き合い、思考を深めました。これらの思考は、生徒の将来の社会生活でも重要な役割を果たすと思います。
グローバル探究Ⅱでは、多様な分野の学びと連携し、生徒が協同しながら探究を進めることで、話す力や聞く力、そして意見をまとめて伝える力も向上することができます。
また、コミュニケーションの基本となる礼儀や敬意を持った対話の大切さも少しずつ学んでいます。協力し合いながら学ぶことの楽しさや重要性を、生徒たちに感じてもらえればと思います。
【第6回】外部講師講演会
講演会①「薬について考えてみよう」
5/21(火)6限・7限、大阪大学より稲野辺 厚氏と、京都府立医科大学より本校46期卒業生の武元 宏泰氏をお迎えし、特別講義を行いました。
大阪大学大学院医学系研究科 稲野辺先生からは、「薬について考えよう」というトピックで、探究活動の魅力や厳しさ、深さについてお話いただきました。
古来は食物を医薬品として用いていた歴史から始まり、アスピリンの効用や副作用についてふれ、形質膜あるいは内膜系に存在するイオンを透過させる役割を持つ膜タンパク質であるイオンチャネルを薬物の標的とする中で、創薬技術の開発や課題についてご講義いただきました。
講演会②「大学での研究と創薬モダリティ開発の一例」
京都府立医科大学大学院医学研究科 本校46期卒業生の武元先生は、大学での研究と創薬モダリティ(医薬品の作られ方の基盤技術の方法・手段、もしくはそれに基づく医薬品の分類のこと)開発の一例についてお話くださいました。
がん発生の原因探索や記憶のメカニズムの追及など教科書に掲載されるような学問の追及、そしてがん原遺伝子の検出手法の開発や認知症治療薬の開発等産業に結び付くような技術開発をすることが、大学における研究であるとおっしゃっておられました。また、研究をする上で武元先生が大事になさっていることは「アイデアが出たらまずやってみること」、「課題解決型思考」であることをお話され、まさにグローバル探究Ⅱで培っている探究力につながると感じました。
生徒たちの憧れの大学で、第一線でご活躍なさっておられる先生方のお話は、今後の各生徒の探究活動はもちろん、生徒が進路を考える良い契機となりました。
【第7回】研究年間スケジュール確認、研究計画書作成+文献調査
何を研究するのか、研究の目的は何か、なぜこの研究をするのか、研究の仮説や研究を通して明らかにしたいことなどを考え、研究計画書を書くうえで必須の要素を学びました。先行研究について触れ、それに対してこれから行う探究がどういう意味合いを持つものになるのかを調べている生徒もいました。
生徒は「何を、なぜ、どうやって」という3つを意識しながら、次のような構成を考えていました。「研究タイトル(題目、テーマ)、研究の目的(何を)、研究の背景(なぜ)、研究で採用する方法(どうやって)、研究の結果から予想される成果、研究の特徴、文献」
前提知識や先行研究などの状況を適切に把握し、どのように研究を進めるのかといった研究方法や予想される成果と仮説、研究の特徴などこれからの展望を考察することができました。
【第8回】研究計画書の評価ルーブリック提示、研究計画書作成
研究計画書を作成する中で、生徒は真剣に取り組めば取り組むほど、研究とは何か、仮説をどのように立て、探究を進めていくのか、戸惑っている生徒もいました。研究とは自分が知らないことを調べることではなく、自分が「こういう仕組みでこんな現象が起こっているのではないか、この仕組みならばこうしたらこんな現象が起こるのではないか」と考えたこと(仮説)を実験や観察のデータから確かめる(検証)ことではないでしょうか。
考える材料を集めるための実験・観察で得たデータを基に「自分はこう思う」というのはスタート地点に過ぎません。その考えを明らかにするための実験をする必要があります。確実にそれだけを検証できるよう他の条件は同じになるように計画し、複数のデータを比較して初めて「○○は○○によって○○となる」と言えます。
研究計画書を作成しながら生徒は、自問自答を繰り返し悩み、新たな問いと向き合いながら取り組んでいる姿が印象的でした。
【第9回】 研究計画書作成及び修正、1分間スピーチ
探究計画書の作成や修正に取り組んだ後、7限では1分間スピーチを実施しました。
1分間スピーチでは、探究予定のテーマやリサーチクエスチョン、先行研究、研究目的意義を話しました。実際にやってみると、1分という時間は意外と短く、生徒たちはその中で自分が伝えたいことを効果的に話すのは大変だと実感していたようです。導入のつかみが上手い生徒、ストーリー仕立てに話す生徒、慣れた口調で上手にまとめる生徒など多種多様な1分間スピーチがありました。
たった1分だからこそその中に、話す人の思いや個性が凝縮されていました。
【第10回】 研究計画書作成及び修正
前回の1分間スピーチや級友からのフィードバックを受け、自身の研究計画書をさらに良いものにするため、研究計画書を修正する時間をとりました。
1つ問いが解決したと思ったら、また新たな問いが生じてきます。探究のサイクルでは、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現、新しい課題の設定というように、振り返って考えを更新しながら試行錯誤を続けることが大切にです。いい探究の問いは、ある結論にたどり着いたときに、次の魅力的な問いがまた生まれるものです。
このサイクルを回すことを習慣として楽しめるようになると、気づきが生まれ続け、勉強や生き方にいい変化がたくさん訪れることでしょう。
【第11回】 2年生(68期)修学旅行事前学習会
第2学年の北海道修学旅行事前学習とグローバル探究Ⅱがコラボし、洞爺湖ガイドセンターの小川 裕司様と北海道博物館の池田 貴夫様をお迎えし、北海道の自然や環境、アイヌ文化についてご講演いただきました。ご講演では、北海道で居を構え実際にお仕事をなさっておられるお二人の実体験を交え、北海道の気候やユニークな生き物のお話、アイヌ文化の奥深さをお話くださいました。
北海道の歴史、文化、食、北方領土問題、環境、大自然等、多様な観点から「北海道」を見ることで、新たな視野と学びを広げることができました。
【第12回】 研究計画書最終確認及び夏季休業中の課題について
研究計画書の最終確認を行いました。生徒たちは、研究テーマやテーマ設定の理由と背景、具体的に何を明らかにしたいか、仮説または予想、研究材料や調査場所とその準備方法、必要な器具や機材とその準備方法、実験や調査の項目・内容・進め方、何を変化させたときの影響を調べるか、データの取り方等、研究の日程、研究を進めるにあたっての注意点や問題点を考え、試行錯誤を繰り返しながら、研究計画書の最終調整に取り組みました。
【第13回】 夏休み課題報告会
各グループで小人数の班を作り、夏休みの課題の取り組みや進捗について、報告会を行いました。自分の探究活動と他者の探究活動を比較分析することで、新たな気づきがうまれたようです。あわせて、大阪大学・大学院などの学生からいただいた、自身の探究に関する助言コメントを読み、探究内容をアップデートすることもできました。
【第14回】 インタビューやアンケート調査のルール及び中間発表の方法説明について
探究に必要なアンケート調査に関する諸注意やインタビューに伴うアポイントメントの取り方などを確認しました。11/12(火)に予定している中間発表の形式や項目も共有することで、リサーチクエスチョンを再確認し、調査法を具体化することができました。
【第15回】グローバル探究Ⅲの取り組み共有
各グループにわかれ、自分たちの先輩が取り組んでいる探究活動の内容やその発表の様子を動画で視聴しました。自分たちの先輩ということもあり、非常に親しみを感じながらも、先輩方の緻密な調査や明確なエビデンスなど、探究活動に対する姿勢やその取り組みの深さが心に届いたようでした。自分たちの探究活動を再度見直す、良い契機となりました。
【第16回】データサイエンスを探究に活かす
さつきホールにおいて、情報学と統計学をもとにした新たな価値の創造とされるデータサイエンスについて、本校数学科 増田先生が授業をしてくださいました。情報学は、近年ではデータはビッグデータと呼ばれるように大規模化しており、効率的かつ適切に処理するためには情報学におけるプログラミングの知識や統計ソフトの操作への熟練が必要となっています。高校では Excel が用いられることが多くある一方、多くのデータサイエンスの現場では R や Python が用いられています。統計学は、データを処理するための数学的技術であるといえます。増田先生よれば、統計学と情報学の活用だけでは、データサイエンスとは言えないようです。データサイエンスが強調するのは「価値の創造」であり、「問題の解決策」をデータに基づいて導き出すことに主眼があるそうです。この「問題を解決する」志向性をもつという点において、データサイエンスと「探究」は強く接点を持っているといえるでしょう。各自の探究活動をより良いものにするための、有意義な学びとなりました。
【第17回・第18回・第19回】個人探究活動
各類似分野ごとのグループにわかれ、担当先生の指導のもとで探究活動を実施しました。
【第20回】中間発表
自身の分析・探究した内容を説明する力を高め、最終探究論文に向けた自身の探究内容を言語化または視覚化して整理する力を養うことを目的として、中間発表を実施しました。発表形式は、班内で相互発表とし、発表5分+質問3分の計8分間のポスターセッションとしました。発表者は緊張しながらポスターを前に掲示して、それに基づいた内容を説明し、その後、聴講者からの積極的に質問に、臨機応変に対応していました。本校卒業生の協力のもと、大学生や大学院生から指導助言をいただきながら、各自の探究内容をアップグレードすることができました。
【第21回】個人探究活動
各類似分野ごとのグループにわかれ、担当先生の指導のもとで探究活動を実施しました。
【第22回】アカデミックライティング
2年生全員がさつきホールに集まり、アカデミックライティングについて学びました。内容の「問い」と「答え」は明確か、「論拠・証拠」は信頼できるものかなど全体構成や内容の注意点、他人の文章を剽窃していないか、情報を裏付けなしに利用していないかなどアカデミックな倫理上の注意点を学びました。また、修正を要する課題探究レポート例を使いながら、小グループや全体で、どの箇所をどのように適切に修正すればよいのか、ディスカッションを行いました。
(最新更新日:2024.12.11)