令和6(2024)年度、池田地区附属学校研究発表会(11月16日)の実施内容をお伝えします。
お越しいただきました方々、誠に有り難うございました。
このページでは、高等学校の部の実施内容をご報告いたします。
附属小学校・附属中学校の実施内容は、各学校のHPなどをご参照ください。
【目次】
①総論
②総合発表(総合的な探究の時間)
③高等学校の公開授業(国語科,地理歴史科,理科)
①総論
池田地区の小中高の共同で取り組む研究テーマについて、総論提案を致しました。
本年度の研究発表会の趣旨である「グローバル社会を協働的に創造する資質・能力の育成(2年次)―グローバル市民コモン・ルーブリックを活用した学習のあり方― 」について、小中高合同で説明を致しました。
上記のグローバル市民コモン・ルーブリックを利用して、各授業者がグローバル市民の資質・能力を育む授業を行います。詳しくは、こちら(スライド)をご覧ください。
②総合発表
総合的な探究の時間
グループ探究における中間発表を深める取り組み
【授業者】岡本元達(理科)、石川和宏(数学科)
③高等学校の公開授業
現代の国語(国語科)
ワールド・カフェを通したアサーティブ対話の実践
【授業者】髙市佳名子(国語科)
【指導助言者】石橋紀俊先生(大阪教育大学)
【授業概要】
本単元は、池田地区がめざす「グローバル市民」を表すコモン・ルーブリックのうち、「寛容な人」に関連する。高等学校段階の「寛容な人」とは、「他者の意見や考え方に対して共感と傾聴の姿勢で接し、多様性を尊重しながら相互理解を深めることができる」人物のことを言う。
「寛容な人」と聞くと、「何事も許してくれるような人物」をイメージしてしまいがちである。しかし、他者の意見に「共感するのみ」「傾聴するのみ」では、声の大きい人、主張の強い人の意見が通るだけで、「多様性の尊重」や「相互理解」には繋がらないとも考えられる。寛容でありながら互いを尊重したり、互いに理解したりするためには、上手に自身の意見を伝えることや、そうした「場」を作ることも大切だ。
本単元では、「アサーティブ・コミュニケーション」の技法を用いて教科書掲載教材である「ワールド・カフェ」を学び、実践することにより、学習者が相手の権利を侵害することなく、誠実に、率直に自己表現するような対等なコミュニケーションを知り、実践していくことをめざす。そのために、「話すこと・聞くこと」の思考力、判断力、表現力にあたる「論点を共有し、考えを広げたり深めたりしながら、話合いの目的、種類、状況に応じて、表現や進行など話合いの仕方や結論に出し方を工夫する」力を養っていく。
歴史総合(地理歴史科)
感染症でまなぶ歴史総合〜現代的諸課題としてハンセン病を考える〜
【授業者】古澤美穂(地理歴史科)
【指導助言者】笹川裕史先生(大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎)
【授業概要】
本授業の全体構想は、「歴史総合」の各大項目に設けられた中項目「現代的諸課題」でハンセン病を取り上げ、3つの大項目(B「近代化と私たち」、C「大衆化と私たち」、D「グローバル化と私たち」)を貫く問いの題材とするものである。そのうち、本授業が扱うのは大項目Bで、近代における世界のハンセン病対策を概観し、明治時代(「隔離」政策が本格化する直前まで)の日本のハンセン病対策と、それに関わった人々の動きを、さまざまな資料を読み解きながら考察する。池田地区がめざす「グローバル市民」コモン・ルーブリックでは、「つなぐ力のある人」(様々な知識と世の中の出来事とを関連づけて考え、多様な人とのつながりを大切にする力を育成する)に関連する。
近代日本におけるハンセン病の歴史は、国による「隔離」政策をめぐり、啓発の観点から人権教育として扱われることが多いが、「隔離」政策に対して現代的な価値観で一面的に把握される印象が強く、結果として、患者に対する苛烈な差別や人権侵害に対する責任を国だけに負わせ、複雑な構造を持つはずの差別の実態を見えにくくしている可能性がある。コロナ禍では、「自粛警察」という言葉に象徴される同調圧力の弊害も少なくなく、「普通」の人々の「正義」や「善意」による差別的で偏見にもとづいた言動が散見された。仮にハンセン病の歴史を教訓にした啓発が表面的なものにとどまれば、新しい感染症に襲われた際、新たな差別や偏見が生まれ、深刻な人権侵害が繰り返されかねない。約90年にわたるハンセン病患者の「隔離」政策の過程で、多大な人権侵害が行われてきたことは忘れてはならない事実であるが、近年、研究者が指摘するように、政策の実態は時期によって異なるため、関係者たちの判断や受け入れざるを得なかった患者、彼らを取り巻く人々や状況などについて丁寧に紐解きながら検証することを通じて、現代的な諸課題を歴史的に考察する力を育み、課題解決に向けた構想を主体的に議論させたい。
化学基礎(理科)
シミュレーションを通じた滴定曲線の理解
【授業者】文部一希(理科)
【指導助言者】安積典子先生(大阪教育大学)
【授業概要】
滴定曲線は、ここまで学習してきた酸・塩基の内容(酸・塩基の強弱、pH、指示薬、中和の量的関係、塩の液性)を総合的に活用する単元である。したがって、これまでの学習内容に触れながら、滴定曲線について理解が深まるように指導していかなければならない。しかし、滴定曲線の実験的な指導は、pHメーターで測定をしてグラフを描くことにとどまり、曲線の概形の複雑さから、どのようなパラメータで決まるかまでは指導することは少ない。
そこで本授業では、滴定曲線を行列演算を得意とする計算ソフトMATLABⓇを用いてシミュレーションし、滴定曲線の概形を決定するパラメータについて考察し、より深い理解を促すようにした。今回の授業では、池田地区が目指す「グローバル市民性」を表すコモン・ルーブリックの「つなぐ力のある人」「探究力のある人」「寛容な人」に関連している。「探究力のある人」の項目では、化学基礎の上位科目である化学で学ぶ電離定数と電離度の関係を示し、滴定曲線における滴下前のpHが電離定数で決まることを、シミュレーションと考察を通じて確認させる。また、「つなぐ力のある人」の項目では、実験プリントの考察を通じ、滴定前のpHが電離度で決定されること、中和点における滴下体積が量的関係で計算できることに気づかせる。さらに、「寛容な人」の項目では、食酢の濃度決定および滴定曲線のシミュレーション実験で、班のメンバーで協力し、実験操作やシミュレーションを行わせる。また、班内で意見を言い合い、考察に向かわせ、協調性を養う。
本授業では上記に加え、高校ではあまり扱うことのない、グラフのシミュレーションに挑戦させることで、データ解析の考え方やデータ処理の素養を培うことも目的としている。