第37回(令和6年度)公開セミナー
「可能性を信じて~変化する素晴らしさ~パラスポーツを通して~」
講師:高橋 明 先生
「僕の宝物」
講師:嵯峨根 望 先生
日時:令和6年11月16日(土)14:00~16:00
場所:大阪教育大学天王寺キャンパス西館ホール
令和6年度の公開セミナーでは、大阪体育大学客員教授の高橋明先生と大阪府シッティングバレーボール協会会長の嵯峨根望先生をお招きしまた。高橋先生には「可能性を信じて~変化する素晴らしさ~パラスポーツを通して」について、嵯峨根先生には「僕の宝物」についてご講演いただきました。
高橋先生は1974年に障がい者スポーツの普及活動に取り組み始めてから50年になります。計5回の冬季・夏期パラリンピックに日本選手団の監督やコーチとして参加されました。現在、大阪体育大学客員教授等で講師を務めながら、講演活動を全国で展開され、様々な障がい者スポーツ団体の役職を担っておられます。
私たちは障がいに目を奪われがちですが、残された体で何ができるかを考えなければなりません。「片腕がなくても、こんなことができるんじゃないかと想像してみる。こんな工夫をすればできると考え、その道具などを創造する。できる喜びや楽しさを障がい者が体感すれば可能性がどんどん広がっていく」と語られました。国民栄誉賞を受賞された車椅子テニスの国枝慎吾さんの例を紹介してくださいました。彼にとって車椅子は単なる補助具ではなく、輝かせてくれる道具でもあるのです。義足を装着した陸上選手も同じことが言えます。パラリンピック創始者Dr.グッドマンの言葉「失った機能を数えるな、残った機能を最大限に活かせ」を引用され、「パラリンピック選手たちはなぜその障がいを受傷したのか。耐え難い絶望感をどう乗り越えて努力を重ねてプレーしていることを考えてみてほしい。」とぜひ障がい者スポーツを見て障がい者の可能性を知ってほしいと話されました。
また、選手が実際に使用した競技用と生活用の義足を会場まで運んでくださいました。手に取ってみて想像以上に重量があるうえ膝関節が動きにくく、普通に動かすだけでも大変なのに競技ができるまで計り知れぬ努力を重ねてきたのだと驚きました。
高橋先生は学生に日頃から障がい者に積極的に声をかけるように指導されています。ある学生がお風呂で片腕のない方に話しかけ背中を流してあげた時の出来事です。その方は帰り際にお礼の言葉とともに「本当に流してほしかったのは腕」と言われ、はっとしたそうです。「障がい者と接する中で多くの気づきがあり、不便を想像する力があれば解消できる社会の問題はまだ多い。そういった課題を解決していけば障がい者が安心して生活できる社会につながっていく」とおっしゃいました。
後半は嵯峨根先生にお話いただきました。嵯峨根先生は13年間勤めた市役所を退職され、現在は訪問介護施設で働きながら自身の経験を伝えるために数多くの講演活動を行っています。先天性四肢障がいがあり、東京2020パラリンピックのシッティングバレーボール競技に出場されました。
幼稚園の頃は、足がない自分のことを特別な人間「スーパーマンなのだ」と思っていましたが、小学生の頃は周りの目を気にするようになり、いつも長ズボンをはいて障がいを隠していました。気持ちに変化が現れたのは中学生になった夏休みに友だちの家に泊まりに行ったときです。義足をつけたまま寝ようとしましたが、暑さに耐えきれず、義足を外してよいかと聞くと、「やっと見せてくれるんやな。」と友達に言われて、障がいは隠さなくていいんだと気持ちがクリアになりました。大学では社会福祉を学び、3年生のときに高橋先生のすすめでシッティングバレーボールチームに入団されました。
嵯峨根先生はユーモアを交えながら障がいを受け入れていく経緯を明るく話してくださいました。左足の義足を外し、「僕の宝物」は「僕の足だ」と笑顔でおっしゃいました。僕の歩き方で僕だと気づき、10年ぶりに声をかけてくれた小学生時代の恩師や沢山の友だちとも不思議なご縁でつながることが出来ました。
今は2児の父となり、同じ障がいを持つ女の子が生まれましたが、夫婦で力を合わせて乗り越えていこうと言葉に力を込めました。講演活動に加え、YouTube(サガネットTV)などSNSでも発信し続け、誰もがが暮らしやすい社会にしてきたいと最後を締めくくられました。
今年度は二人の講師をお迎えして大変貴重な話を聴かせていただきました。障がいとは何か、多様性を認めてより良い社会にするために自分にできることは何か、改めて考えさせられました。
高橋先生、嵯峨根先生、本当にありがとうございました。